探偵伯爵と僕

<前置き>

森博嗣作品の感想をいずれは、全て書きたいと思いますが、現在筆者は忙しいので、まずはシリーズ外の小説から読んでいきたいと思います。筆者は、高校生の頃に氏の作品は一通り読んだため、ほとんどが再読となります。いずれは年表も作りたいな~、とは思いますが、はていつになるのやら。人生はまだ長いと思われるので、死ぬまでに終わるといいなと思っています。

<感想>

往年のファンとして、まず、伯爵は保呂草ではないかと疑ってしまいました(笑)。そんなことは無かったです。シリーズ外でも実はシリーズ内であるケースが多い氏の作品ですが、この本は完全に独立していると思われます。筆者は文庫版で読みました。解説がアンガールズ田中さんで、彼は主人公がませた子供であることがあまり好きではなったとおっしゃってましたが、私は真逆で、この子は色々なことに気づいて考えられる面白い子だなと思って読んでいました。氏の子供の頃は主人公の様だったのではないかと勝手に想像します。一番印象に残っている点、などのような言い回しだと、小学生の読書感想文が頭にちらつきますが、やはり最後の方の主人公の「そう思ったのはなんとなく~それは本当の気持ちです」(文庫版:269p)の所です。伯爵が普通の大人と違っているところに惹かれた主人公でしたが、事件が全部終わって、レストランで食事をするときの伯爵は普通の大人に見えてしまった。それはとても寂しいことだと彼は思った。へんてこりんな伯爵にこそ主人公は魅力を見出していたが、やはり大人との常識やまともなバックグラウンド、行動の理由があり、彼の謎加減は薄れてしまったことに悲しさを感じてしまった主人公です。言葉に表すのは難しいですが、やはり伯爵といえど、普通の大人であった。伯爵はいつまでも奇天烈な伯爵というわけではないのだ、という所に、仕方のないことですが、僕も寂しさを感じてしまいました。別の印象に残った点としては、主人公が被害者の性別を入れ替えたことに、伯爵は醜い現実から目を遠ざけてはいけないと忠告したところです。おそらく、被害者の名前のローマ字表記の母音がaのみのこと、前の被害者たちがじゃんけんの名前であったことも、主人公の創作なのではないかと思います。もしかしたら、伯爵の名前が「千代木」であることまでは本当で、そこから想像を広げたのかもしれません。いずれにせよ、伯爵も指摘していましたが、これらのことは、小説として仕上げる際にはスパイスとなり、苦みを取り除く要素になりますが、現実の事件の醜さが覆われてしまいます。主人公も、もしかしたら無意識ではかなりのショックを受けていたのかと想像しました。ラストに衝突のような力積を与えるのは氏の常套手段ですね。ωでも...(自粛)

<全くもってトリヴィアルな事柄>

◎伯爵の行動の時系列は、アール探偵社を創始、経営→自分の娘が殺された→東京の本社を辞める→隣の県に移動、調査 であるかと。

◎文庫版p.151、主人公が見た社名は多分「Earl Detective Company」

◎「探偵伯爵」というワードをすんなり受け入れてしまったが、よく考えると、探偵と伯爵は全く接点がない語。ミステリ作品などを通じて、探偵に伯爵的なイメージがあるから受け入れてしまった?僕だけ?

チャフラフスカの元ネタはオリンピック選手の「ベラ・チャスラフスカ」と思われる。筆者は全然分からなかった